研究概要 |
子宮頸癌ではヒトパピローマウイルス(HPV)E6,E7蛋白質発現がその癌化に深く関与している。そこで、HPV18型E6,E7遺伝子を標的としたsmall interference RNA(siRNA)の効果を解析し、腫瘍増殖抑制効果について検討した。子宮頸癌由来培養細胞株SKG-II、SKG-III, HeLa細胞にHPV18型のE6の5プライム領域を標的としたsiRNAをトランスフェクションし、細胞増殖能を測定し、E6E7mRNAを測定した。HPV18型陽性のSKG-II、HeLa細胞では増殖抑制が観察されたが、HPV16型陽性SKG-III細胞では効果がなかった。SKG-II、HeLa細胞ではrealtime-RT-PCR法にてE6,E7mRNAの発現がコントロール群に対し30%まで抑制され、ウエスタンブロット法にてE7蛋白質の発現低下とRb蛋白質の発現上昇が認められた。しかし、P53蛋白質発現パターンには変化が認められなかった。SKG-II細胞において細胞老化の指標としてべ一タギャル染色を施行したところ、陽性細胞数の増加が観察されたことから、このsiRNAはE6,E7遺伝子発現を抑制し、E7蛋白質の発現低下とRb蛋白質の発現上昇をおこさせ、老化を誘導し細胞増殖抑制がかかると推察した。そこでsiRNA・アテロコラーゲン複合体をヌードマウス移植腫瘍に局注し、腫瘍増殖抑制効果をin vivoに検討した。培養細胞をヌードマウス皮下に接種し腫瘍を形成させたところでsiRNA・アテロコラーゲン複合体を腫瘍に局注したところ、siRNA・アテロコラーゲン複合体は移植腫瘍増殖を抑制した。さらに、摘出腫瘍では標的siRNA投与群にKi67発現低下を認め細胞増殖能の低下が示唆された。以上よりsiRNA・アテロコラーゲン複合体治療は分子標的治療の候補となりうる。
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