研究概要 |
子宮頸癌の発生にはhuman papillomavirus(HPV)感染が深く関与している。現在では100種類同定されているHPVの中で約15種類のウイルスが子宮頸部発癌に深く関与するといわれている。HPV感染後ウイルス遺伝子が宿主DNAに組み込まれるとoncoproteinであるE7蛋白質が強発現すると報告され、ウイルス遺伝子の存在形式も重要な予後因子と捉えられている。一方、HPV感染によりPI6蛋白質が強発現することが知られている。したがって、HPV型、遺伝子存在形式、P16蛋白質発現を癌検診にて採取される液状検体(LBC)細胞診の細胞を用いて解析し、前癌病変から癌へのハイリスクグループを抽出する補助診断法を確立した。 子宮頸癌組織からDNAを抽出しヒトゲノムBACマイクロアレイCGHを用いて子宮頸癌の網羅的遺伝子解析を行った。その結果、腺癌に特有の遺伝子変化は見当たらないが扁平上皮癌、腺癌の両者において3q,11q,5p,6pで各々75%,65%,45%,40%の変化を認めた。3q26.3、5p15.2,5p15.33,5P13.1の増幅は多くのサンプルで共通して見られた。一方、6q26-q27、11P12-14にかけて欠失を認めた。とくに6qの遺伝子変化は従来の報告がないことから興味深い。 今回、感染ウイルス型同定を情報の基盤として形態学、分子診断、網羅的遺伝子解析を行い、子宮頸癌診断技術の改良に役立つ情報を得ることができた。
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