研究概要 |
transforming growth factor beta-1(TGFβ1)の卵巣明細胞腺癌治療への臨床応用、つまり分子標的薬剤としての導入の可否に関する基礎的検討を行った。卵巣明細胞腺癌株(RMG-I、RMG-II、KK)を用いて、細胞数および細胞周期を検討した。その結果TGFβ1はいずれの細胞株においても細胞毒性を発揮しない濃度において、G1停止細胞を有意に増加させ、増殖を抑制していることが確認された。また典型的な増殖抑制効果を示したRMG-Iにおいて、CDKインヒビターであるp57のmRNA発現を、またマトリクス分解酵素であるMMP2のタンパク発現およびプロテアーゼ・インヒビターであるPAI-1のmRNA発現を検討したところ、TGFβ1の濃度依存性にp57およびPAI-1発現が促進されていることが確認され、またMMP2発現は潜在型および活性型のいずれにおいても抑制される傾向にあることが判明した。TGFβ1によるRMG-Iの浸潤能の相違を検討したところ、有意な増殖抑制をきたす濃度において、RMG-Iの浸潤能をも抑制する傾向にあることが判明した。RMG-IのSCIDマウスによる皮下移植モデル(早期癌モデル)を作成し、TGFβ1およびプラセボを(1)腫瘍への直接投与、(2)腹腔内投与、の2群に分けて行い、摘出腫瘍重量を測定し、さらに摘出腫瘍のBrdU labeling indexを算出し、比較を行った。その結果いずれの群においても、TGFβ1の投与により腫瘍重量および腫瘍増殖能は抑制される傾向にあった。RMG-Iを用いて、既存の抗癌剤(paclitaxe1,SN-38,CDDP)にTGFβ1を併用した場合の増殖抑制効果を検討したところ、いずれの抗癌剤との併用においても、より強い増殖抑制効果を発揮する傾向にあった。
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