研究課題
基盤研究(C)
性器脱の外科的治療において、膀胱瘤に対する前膣壁縫縮および形成術は比較的アプローチしやすいため婦人科医、泌尿器科医ともに施行頻度の高い術式である。しかし膣壁と尿道、膀胱頸部の間隙を広範囲に剥離する操作であり、手術によって微小神経や結合織、平滑筋、横紋筋などを損傷させることによって術後に内尿道の括約機能の障害を起こす可能性も懸念されている。骨盤底の各臓器に分布する神経分布は骨盤神経叢のような大きな神経の走行は解剖学的に検討がなされているものの、下部尿路系の排尿機能に重要な骨盤底組織(筋肉、筋膜)を支配する神経系の局所解剖には未知の点が多い。18年度の本研究において解剖献体を用いて膣壁の側方に位置する微小神経束の分布を詳細に検討した。その結果、骨盤神経叢から走行すると考えられている神経束から10mm以上離れた位置に豊富な神経束を同定した。それらの神経束はS100抗体とTH抗体で染色される節後型交感神経束で骨盤神経叢の頭側から生じ、尿道平滑筋に連続する神経束であることを同定した。本神経束のもつ骨盤底支持機能との関連をさらに解析するため、前膣壁と膀胱間の分布する節後性交感神経線維束の神経密度、線維の太さと臨床事象を比較検討した。Baden & Walker分類でgrade2以上の膀胱瘤を主症状とする患者57名に対し、インフォームドコンセントの上、外科的手術時に切除した前膣壁標本を用いて病理組織学的に検討した。神経線維の同定はヘマトキシリン・エオジンによって筋組織、血管組織を確認し、S100蛋白、チロシン水酸化酵素(TH)抗体による免疫組織染色を用いた。57症例を本神経束の太さと密度でgrade 1〜3に分類(grade 1:29症例、grade 2:16症例、grade 3:12症例)した結果、Q-tip試験による尿道可動性と尿失禁の頻度に有意の相関を確認した。前膣壁に免疫組織化学的に同定された神経線維は従来報告されている骨盤神経系の線維束より内側に存在し、膀胱頸部から尿道に向かって走行し、尿道支持機能に重要な役割をもつことが示唆される。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (9件) 図書 (2件)
Clin Anat, 20(3)
ページ: 300-306
千葉県産婦人科医会報 64
ページ: 17-22
J Reprod Immunol 70(1-2)
ページ: 59-69
FEBS Lett 580(11)
ページ: 2717-2722
Maturitas 54(2)
ページ: 141-148
臨床婦人科産科 60(6)
ページ: 880-883
産婦人科治療 93(1)
ページ: 35-41
日本女性骨盤底医学会誌 3(1)
ページ: 30-33
産婦人科の実際 55(13)
ページ: 2223-2228