科学研究費を利用して現在いくつかのプロジェクトが進行中である。以下に途中経過を記載する。 扁桃病巣疾患の一つとしてIgA腎症が挙げられる。扁桃におけるIgAの過剰産生のメカニズムについて、従来の抗原提示細胞からT細胞を介してB細胞を活性化するT細胞依存性経路以外に、T細胞非依存性経路の重要性が示唆されている。その主役をなす分子であるBAFFに着目した。われわれの研究の結果、IgA腎症患者の扁桃リンパ球においてBAFFの過剰産生がみられ、IFN-γ刺激によってさらに産生が増加した。また、細菌由来DNA(CpG-ODN)の刺激でBAFFの産生が充進した。BAFFの産生と扁桃リンパ球からIgAの産生に関連性を認めた。よって扁桃B細胞の活性化やIgAを含む免疫グロブリン産生にBAFFが深く関与している可能性がある。 また、扁桃病巣疾患の一っとして掌蹠膿庖症がある。掌蹠膿庖症患者の扁桃T細胞におけるケモカインレセプターの発現を検討したところ、その一つであるCCR6の発現が亢進していることが示された。さらに末梢血中のCCR6の発現の程度と扁桃摘出術後の症状改善の程度とが相関を示した。掌蹠膿庖症皮膚ではCCL20の発現が充進していた。よって掌蹠膿庖症の病態の一つとしてCCR6を発現した扁桃Tリンパ球が末梢血を介して皮膚に浸潤するメカニズムが考えられる。今後これらについてさらに研究を進めて行く予定である。
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