研究概要 |
本年度はニオイ刺激装置を作製し,健常人を用いてニオイ刺激時の脳血流変化を近赤外線分光法(光トポグラフィー;ETG-4000,HITACHI)を用いて測定した。ニオイ刺激装置は電磁弁を用いたマルチチャンネルの装置であり,パーソナルコンピューターを用いて制御した。刺激に用いた嗅素はフェニルエチルアルコール,硫化水素であり,三叉神経刺激ガスとして二酸化炭素を用いた。3種の刺激ガスを無臭空気刺激を挟んで交互に被検者鼻腔に流し,その間の酸化ヘモグロビン,還元ヘモグロビンの変化を光トポグラフィーを用いて測定した。被検者は嗅覚正常な成人13名と外傷性嗅覚障害患者1名である。被検者には開眼の上,安静鼻呼吸をさせた。両側側頭部に固定したそれぞれ15個のプローブから22チャンネルのデータを得た。各刺激の直前の空気刺激時のデータとの差をもって刺激時の値とした。結果として,それぞれのニオイ刺激,三叉神経刺激において酸化ヘモグロビン濃度は特定のチャンネルにおいて経時的に特有の変化を示した。また刺激後に有意な反応を示す部位を検討したところ,ニオイ刺激時と三叉神経刺激時とでは異なる印象を受けた。すなわちニオイ刺激時では前方に変化が強くあらわれるのに対して,三叉神経刺激では後方で強く現れる傾向を示した。しかし,被検者による差も認められるため,現在更なる解析を行っているところである。一方,外傷性嗅覚障害患者では,三叉神経刺激ではヘモグロビン濃度の変化を認めたのに対して,ニオイ刺激において有意な血流の変化は認めなかった。
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