研究概要 |
成人スギ花粉症患者23名に半成17年より継続してスギ花粉抗原による舌下免疫療法を行った。舌下免疫療法の治療効果は,くしゃみ・鼻汁・鼻閉の自覚症状において初年度から症状の軽快が認められた例もあったが,全般には初年度よりも2年目で効果が高かった。また,抗アレルギー効果のある薬剤の使用量を示すmedication scoreも同様の傾向にあった。鼻アレルギーのQOL調査票でも,各ドメインで良好な結果が得られた。しかし,スギ花粉飛散期に良好であった臨床症状は,スギ花粉と共通抗原を有するヒノキ科花粉飛散期に臨床効果が減弱し,QOLも低下した。ヒノキ科花粉飛散期の対応が必要と考えられた。これらの症例で,治療効果を客観的にモニターできる検査方法を検討し,末梢血好塩基球からのスギ花粉抗原刺激によるヒスタミン遊離試験(HRT)を検討した。舌下免疫療法を行うと,花粉飛散前でのHRTの変化は抑制される傾向にあった。また,花粉飛散期にはいってもHRTが悪化せずに抑制が保たれる傾向にあった。しかし,これらの経時的変化に有意な差がなく,臨床効果とHRTの変化には有意な相関が認められないため,HRTが舌下免疫療法のモニターとはなり難いと考えられた。これらの結果は,過去に我々が報告した皮下注射法における免疫療法時のHRTの抑制に比べると,その反応抑制が少なく,異なる結果であった。舌下免疫療法での体内にはいる抗原量が,皮下注射よりも少ないためにHRTに変化を及ぼさなかったとも考えられた。これらの結果をもとに,新規舌下免疫療法患者と皮下免疫療法患者で細胞性免疫を含めた新たな機序を次年度に計画する。
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