研究概要 |
今年度我々は「ほ乳類内耳発生におけるNotch伝達系の役割の解明-再生医療への応用を目指して」の課題の下で下記の研究実績を挙げた。 我々は内耳におけるNotch活性化の可視化に取り組んできたが、リガンドに刺激された結果として切り出されたNotch1の細胞内領域を特異的に認識するactN1抗体を用いて、内耳発生におけるNotch1の活性化の状況を時空間的に詳細に明らかにした。その結果Notch伝達系が報告されてきた有毛細胞と支持細胞への分化における機能以外に、それ以前の感覚上皮予定領域の決定にもJagged1をリガンドとした側方誘導を通して主要な役割を果たしていることが示唆された。この内容を英文論文として発表した。(Murata J et al.,2006,J Comp Neurol,研究発表の項参照) 次に感覚上皮予定領域の決定の過程でNotch伝達系の下流ではどのような因子が働いているかを調べるためにまずbHLH因子Hes1、Hes5の発現をmRNAレベル、蛋白レベルで時空間的に検討した。感覚上皮予定領域決定の胎生12.5日齢から胎生13.5日齢ではHes5の発現は見られず、Hes1のみが発現し、およびこの発現パターンがNotch伝達系依存性であることが示された。さらにHes1ノックアウトマウスの蝸牛上皮では、CDK inhibitorの一つであるp27^<Kip1>の発現が増大し、これにともないS期の増殖細胞数の割合が減少していることを確認した。結果としてNotch-Hes1伝達系がp27^<Kip1>の発現を抑制することで感覚上皮前駆細胞(Auditory Sensory Precursor Cells, ASPCs)の増殖維持に機能していることを明らかにした。この結果は2007年2月のARO Midwinter Meeting (Denver, Colorado, USA)で発表し、現在英文論文を準備中である。
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