研究概要 |
ほ乳類内耳発生においては以前よりNotchシグナル伝達系が重要な役割を果たしていると考えられてきた。我々は今回の学術研究費補助金の交付を受けて、Notchシグナル伝達系の内耳発生における機能の詳細を解明するために、活性化Notshlのみを特異的に認識する抗体を用いてNotchlの活性化を時空間的に検討した。その結果まず胎生後期のマウス蝸牛において支持細胞前駆細胞での強いNotchlの活性化が観察され、これは以前から主にノックアウトマウスの解析によって報告されてきた有毛細胞・支持細胞分化におけるNotch伝達系の側方抑制を通しての働きを支持する結果であると考えられた。この活性化は生後徐々に弱まっていったが、生後3日齢まで継続し、Notch伝達系が支持細胞の分化のみならず成熟にも関連した機能を有することが示唆された。さらに有毛細胞・支持細胞分化段階以前のより早期の段階である胎生12.5日齢から胎生13.5日齢においても、びまん性のNotchlの活性化が観察され、このNotchlの活性化は感覚上皮(コルチ器)予定領域の決定に関連していると考えられた。我々の結果はそれまでの内耳発生/再生の研究で予想されていながら支持する確実な実験結果がほとんど得られていなかったことを独自の方法で明らかにしたものであり、この結果をまとめた論文(Murata J. et al., 2006)はNat. Rev. Neurosci. 7, 837-849に引用された。
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