ヌードマウス移植実験系では、気相-液相界面刺激により、扁平上皮癌細胞の増殖が促進されたが、転移巣形成には有意な変化は見られなかった。気相-液相界面の有無にかかわらず、癌細胞の細胞膜マイクロドメイン分子であるcaveolinは同定されたが、気相-液相界面刺激では、caveolinの発現が亢進した。しかし、caveolinのsiRNAや抗体の注入実験では、癌細胞の増殖や転移巣形成には影響が見られなかった。コレステロール阻害剤の投与では、癌細胞の増殖、腫瘍の成長、転移巣形成には影響が見られなかった。しかし、高濃度のコレステロール阻害剤は、癌細胞の変性壊死を誘導した。以上のことより、以下のことが考えられる。 1)気相-液相界面刺激では、扁平上皮癌細胞の細胞膜マイクロドメインの主要な分子は、caveolinと考えられる。 2)caveolin分子は、生体では癌細胞の増殖、転移巣形成に関しては、責任分子ではない。 3)コレステロール阻害剤は、生体の癌細胞の増殖、腫瘍の成長、転移巣形成に有意な阻害効果は誘導しない。 以上より、培養系や生体でも、気相-液相界面は扁平上皮癌細胞の増殖促進因子であるが、気相-液相界面刺激誘導性の細胞膜マイクロドメインであるcaveolinは、生体では、腫瘍の増殖・転移巣形成の責任分子ではないと考えられる。さらに、コレステロール阻害剤の抗腫瘍増殖効果は、生体では期待できないと思われる。
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