研究課題
基盤研究(C)
滲出性中耳炎は、難聴を主訴とする疾患で、中耳における水バランスの破綻に伴い滲出液が貯留する病態であり、小児例の2〜3割、及び成人例では治療に著しく抵抗性を示すことがある。遷延する滲出性中耳炎は、手術でも聴力の回復が困難な真珠腫性中耳炎や癒着性中耳炎といった難治性中耳炎の前病変の一つとされ、その予防や治療は、難治性の中耳炎発症の減少につながり、社会的に大きな貢献することが予想される。また、滲出性中耳炎の成因としては、感染だけでなく耳管機能不全の関与が示唆されているものの、その詳細は未だ解明されていない。一方、アクアポリン(AQP)は、約270個のアミノ酸からなる6回膜貫通型の膜蛋白であり、哺乳類では、13種類のサブタイプが同定されている。様々な臓器において、臓器特異的に複数のサブタイプが発現し、それらが協調して働くことにより生理的役割を果たすこと、またその破綻が疾患に関与することが徐々に明らかにされつつある。我々は、RT-PCR法、免疫染色法を用いて、ラット中耳上皮にAQP1、4、5サブタイプが選択的に存在すること、AQP1が間質の毛細血管内皮に、AQP4が線毛細胞の基底膜側に、AQP5が線毛細胞と扁平細胞の中耳腔側に分布することを明らかにした。今回、片方の耳管閉塞によって滲出性中耳炎モデルラットを作成し、滲出性中耳炎になった中耳と対側の正常な中耳を骨包ごと摘出し、パラフィン切片を作成した。現在、免疫染色法にて滲出性中耳炎発症過程のAQPサブタイプの変動とその薬物による影響を解析中である。今後はさらに、摘出骨包から剥離した中耳粘膜をサンプルとし、ウエスタンブロット法にてAQPサブタイプの蛋白量を解析していく予定である。