研究概要 |
正常ラット中耳上皮において、Aquaporin 1、4,5の発現を免疫染色で確認した。Aquaporin 1はcapillary endothelial cellとfibroblastを中心に発現し、Aquaporin 4はciliated cellのbasolateral membraneを中心に発現し、Aquapolin 5はciliated cellのapical membraneを中心に発現していることを確認した。続いて、ラットの耳管を電気凝固する、または経鼓膜的に中耳腔にLPS (lipopolysaccaride)を注入することによって滲出性中耳炎モデルを作り、その中耳上皮をAquaporin 1,4,5で免疫染色した。多くのモデルにおいて、その発現に変化がなかったが、一部発現が増加する傾向にあるものもあった。発現が減少するものはほぼなかった。しかし、肉眼的には中耳炎の程度に差がみられ、ラットの個体差によるものも考えられた。また、滲出性中耳炎モデルを作成後にDexamethasone、clarithromycinを経鼓膜的および静脈内投与したところ、Aquaporinの発現量は変化しないものが多かったが、一部減少するものもあった。我々の仮説としては、Aquaporinの発現の低下という現象が、中耳炎に対する生体の防御機構として重要であると考えていたが、これまでの実験においては、正常群、滲出性中耳炎モデル、およびDexamethasone、clarithromycin投与モデルにおいて免疫染色では有意な発現の差は認められていない。またWestern blot法においても現在のところ差はみられなかった。しかし、一部仮説に沿うような結果も得られており、滲出性中耳炎モデルの確立方法や、薬剤の投与方法、投与量の検討などにより、仮説を裏付けるような結果が得られることが期待される。
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