高転移性癌細胞は強力な血小板凝集能を有し、大きな凝血集塊が腫瘍塞栓を形成することにより転移形成を助長すると考えられている。頭頸部癌症例において、強力な血小板凝集作用を持つAggrusの発現と肺転移の関連について検討を行った。 検討はAggrusに対する抗体を用い、免疫染色にて下咽頭扁平上皮癌について検討した。抗原性の賦活のためデキストランポリマー法を用いた。典型的な癌病変のうち3視野を選び、2名の評価者にて1視野内のAggrus陽性細胞数を数えてAggrus陽性細胞率を算出した。 転移陽性例のAggrus陽性細胞率は20%〜100%(平均68%)と高率であり、細胞質内に陽性シグナルが得られた。一方、転移陰性例では陽性細胞率は0%〜80%(平均28%)と低率であった。両群間の有意差はp=0.058で陽性細胞率が高いほど、肺転移をきたす傾向が得られた。肺転移陰性群においてもAggrus陽性細胞率が高値な症例は今後肺転移を来す可能性が高いと推測され、長期間の経過の観察にて両群間での有意差が明確となると推測される。 肺転移を来したT2症例においては、原発巣、転移巣ともに高いAggrusの発現を示し、Aggrusの高発現と肺転移との関係を示唆する所見であった。 甲状腺未分化癌においても検討した3例においてAggrusの発現が高い傾向が見られ、未分化癌の高い肺転移能を反映していると考えられた。検討した甲状腺分化癌(乳頭癌)3例では1例にAggrusの高発現が見られ、今後の肺転移の危険性が疑われた。
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