1.急性中耳炎患児より検出された肺炎球菌の形態分類 急性中耳炎患児の鼻咽腔および中耳貯留液より分離同定された肺炎球菌保存菌株を用い、Catarase含有Tryptic soy agar(TSA)培地による肺炎球菌コロニーの形態(Opaque型とTransparent型)の分類を行っている。保存株においては、TSA培地によりコロニーの形態の識別が可能であった。臨床検体では、混合感染した細菌との分類が困難であり、TSA培地にさらにGentamycin(GM)を添加することによる改善を試みている。 2.急性中耳炎に対する鼓膜切開・鼓膜換気チューブ挿入術の有効性についての検討 急性中耳炎の重症度を鼓膜所見(鼓膜の発赤、膨隆、光錐混濁)および臨床症状(発熱、啼泣、耳痛)に基づくスコアリング・システムにより分類するとともに臨床経過を評価した結果、中等症例および重症例においては、経口抗菌薬単独治療群、および鼓膜切開併用例に比べてレーザー鼓膜開窓術併用例では、鼓膜所見の有意な改善が認められた。さらに、鼓膜換気チューブ挿入術においては、CTによる乳突蜂巣の含気化の検討を行っている。現在までに、乳幼児中耳炎例においては、中耳貯留液の存在とともに、高頻度に乳突蜂巣に及ぶ粘膜病変が存在しており、鼓膜換気チューブ挿入術によりこれらの病変が2週間から4週問で改善することが判ってきている。 以上の検討に加えて、動物モデルでの肺炎球菌感染と肺炎球菌の形態との評価を行っている。マウス感染モデルでは、すでに鼻粘膜組織中より高頻度にOpaque株が分離されることが判明しており、さらにチンチラ中耳炎モデルでの検討を行っている。現在、チンチラ中耳炎モデルでは、肺炎球菌血清型によりその病原性が異なることが判明した。
|