研究概要 |
好酸球性副鼻腔炎が難治性病態として問題になっているが、この病態の解明ならびに治療に役立つ動物モデルの作成を目的として、一昨年度までに好酸球優位型の家兎上顎洞ポリープの作成を行ってきた。家兎においては好酸球浸潤の優位なポリープがほぼ100%作成できるようになったが、この作成に好酸球ならびに細胞外マトリックスの関与が大きく、それを制御する一つの因子が線溶系であることがわかった。すなわち、好酸球浸潤の強いポリープの形成には好酸球遊走因子、細胞外マトリックス分解酵素であるMMP、線溶系の要素であるt-PA,u-PA,PAU-1,PAU-2が密接に関与するのである。そこで、昨年度からヒトとのアレルギー関連遺伝子の相同の多いマウスにおいて実験的ポリープ作成を試みた。OVA感作法がやや異なることを除き、ほぼ、家兎での作成方法と同一の方法を用いると、粘膜にprepolypoid changeは認めたものの、明らかなポリープ形成には至らなかった。この粘膜の肥厚性変化はTIMP-2投与により抑制された。刺激方法を種々変化させてみたがポリープ形成に至らず、動物種差は大きく、マウスはモデル動物としては不適当という結果となった。 真菌が好酸球を誘導することは広く知られており、Mayo Clinicグループが提出した「副鼻腔炎の原因は粘液に付着した真菌に反応して粘膜外に集蔟した好酸球の脱顆粒により放出された細胞傷害蛋白による上皮傷害である」という仮説を検証する目的もあって、家兎のポリープ形成への真菌の影響をみた。わが国の副鼻腔真菌症の原因として最も多いアスペルギルスでは炎症が起こり、組織のリモデリングが促進される可能性が示されたが、典型的な浮腫性のポリープは形成できなかった。アルテルナリアやムーコルなどにおいても同様な結果となり、真菌の存在のみでは好酸球性ポリープの発生は起こらないと結論した。今後はこれに付加する因子の検討が必要である。
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