近年、非常に粘稠な黄色の貯留液を有し、従来の治療に抵抗を示す難治性の慢性副鼻腔炎や滲出性あるいは慢性中耳炎の報告が多数なされている。これらの症例では気管支喘息を合併することが多いが必ずしもI型アレルギーが証明されない.しかしその副鼻腔や中耳の粘膜および貯留液には多数の好酸球の浸潤がみられる。いかなる機序で好酸球遊走因子産生がおこるのか、その詳細な機序は不明である。本研究ではこの好酸球遊走の引き金となる原因異物の同定を試みた。好酸球性中耳炎症例では血中には抗原特異的IgEが検出されるものと、されないものがある。中耳貯留液ではこれら抗原特異的IgEの産生のみられるものが高頻度に存在し、中耳局所で真菌などの異物により好酸球が誘導される可能性が示唆された。また好酸球性中耳炎では高頻度に感音難聴が合併し、時にはろうとなる症例が存在する。よって好酸球性中耳炎症例における骨導閾値の解析を試みた。その結果、通常の慢性中耳炎症例に比較して4000Hzの骨導閾値が有意に上昇しており、高音部の感音難著が高頻度にかつより高度に生じている結果が得られた。この内耳障害の機序としては高音部が障害される点から考えると、正円窓膜をとおして炎症産物が内耳に到達し、障害していると考えられた。
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