昨年度までは、人および兎嗅粘膜での分泌異常を組織学的に検討した。その結果、嗅粘膜および嗅覚障害時の複合糖質に注目し、これまで人嗅粘膜と呼吸粘膜上皮の細胞表面にある糖蛋白分布の異なることをレクチン組織化学で証明し、さらに兎実験的副鼻腔炎モデルにて、正常嗅粘膜に比べて、炎症時に嗅覚のreceptorである嗅粘膜細胞表面でのシアル酸複合糖質の分布の変化やConAの発現を認めた。本年度は兎嗅粘膜の細胞培養を検討した。そのために、なるべく生体内に近づける目的で、嗅粘膜上皮と繊維芽細胞や脳アストログリアの再構成による嗅粘膜の三次元培養を試みた。その特徴は嗅細胞の新生、増殖を支持する脳アストログリアと上皮細胞の分化を支持する繊維芽細胞を埋め込んだ収縮コラーゲンゲル上に嗅粘膜上皮を移植したままで培地の中に入れ、空気に触れさせながら培養する点にある。コラーゲンゲルが粘膜下のモデルとなり、繊維芽細胞や脳アストログリアと嗅粘膜上皮が上皮・間質間相互作用を作り出し、表面を空気に触れさせることで細胞の分化を促す。また、上皮細胞の分化を支持すると言われるVitamin A加無血清培地と血清培地を用い、両者の培地での増殖および分化能を比較観察する。培養細胞に対して種々のcytokeratin抗体や抗Neurafilament抗体を用い嗅上皮であることを同定する。しかし、現在まで嗅細胞は培地の中では、抗体を用いた嗅細胞の生存の確認は数日間のみであり、明らかな嗅細胞のcelll lineの確立には至っていない。
|