舌運動と下顎運動、頸椎の運動について、臨床例も交えた基礎的知見を得ることが出来た。下顎の下制に伴い、咀囑筋や舌骨上/下筋群の代償的運動は起こらず、外舌筋であるオトガイ舌筋、もしくは茎突舌筋により代償的運動がおこる。頸椎前彎に伴い茎突舌筋の緊張が反射性に高まるが、その際、その拮抗的筋線維の方向を有するオトガイ舌筋の舌背に向かう部分の緊張も反射性に高まる。茎突舌筋の緊張が高まると、口腔内から咽頭内への食塊の移行の妨げとなり、更に二次的に喉頭が後方へ牽引されてしまうため、嚥下時の食道入口部の開大は悪くなり、構音、嚥下に対して不利となることが判明した。これに対して、下顎を閉口位に固定し、舌尖を意図的に制御するような位置を設定することで、嚥下に有利とすることが出来ることが明らかになりつつある。
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