研究の全体構想なぜ「外リンパ」の蛋白解析なのか。ヒト内耳疾患の病態はいまだ不明の点が多く、肝や腎など生体バイオプシーが出来る臓器の疾患と比較して決定的にその解明が遅れている。なぜなら、生体内耳のバイオプシーは不可能であり、内耳で実際にどのような病変が生じているかを病理学的に調べるためには、死後の病理組織標本をみるしか方法がないからである。我々はこの問題を解決するため、生体内耳の変化を「蛋白病理学的」に把握できる唯一のサンプルである外リンパに着目した。腎臓疾患の診断にもっとも有用なのが尿検査であるのと同じように、内耳組織の炎症、変性などにともなう変化は当然外リンパ蛋白に反映されると考えられる。 ・本研究課題の具体的な目的 本研究では、Ettan DIGEシステム(高感度で定量的な2次元電気泳動蛋白解析装置)を用いて外リンパ蛋白の網羅的ディファレンシャル解析を行い、難聴患者の内耳蛋白の変化・変性の本態を探り、治療のターゲットとする蛋白を同定する事を目的とする。 内耳組織のバイオプシーは機能障害をきたすため禁忌であり、ヒト生体内耳組織を用いた研究は、特殊な場合を除き一般に不可能とされてきた。そこで我々は唯一採取可能な内耳サンプルである外リンパに着目した。外リンパは、内耳のホメオスターシスを維持するために不可欠の物質であり、様々な役割を担っていると考えられている。 ・今年度は、Ettan DIGEシステム等を可動させ、基礎実験を行いながら至適条件設定を行い解析を行った。その結果、現在の所我々が以前に発見したCTP蛋白以外の有効な内耳特異的マーカーは発見されていない。現在研究を続行中である。
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