我々の老人性難聴モデルマウス(SAMPl)を用いた一連の研究により、CD4^+リンパ球であるヘルパーTリンパ球(Th)が、老人性難聴の進行を止める抗老人性難聴作用を示すことが明らかとなった。そこで今回、Thの抗老人性難聴機序を検討し、関与する遺伝子・サイトカインの検討を行った。 難聴発症前の2ヶ月齢のyoung SAMP1と、難聴発症・進行中の8ヶ月齢以上のold SAMPlを用いた。また、コントロールとして、SAMPlのワイルドタイプであり難聴や老化の程度が軽微なAKR(2ヶ月齢)を用いた。これらのマウスの脾細胞からCD4^+リンパ球(Th)を、蛍光標識抗体により調製し、次にmRNAを抽出した。DNAマイクロアレイ遺伝子発現解析を行い、3つのサンプルを比較した。old SAM でyoung SAMより2倍以上のup regulationを示した遺伝子は5039個、down regulationしたものは4043個認められた。また、young SAMでold SAMより2倍以上のup regulationを示した遺伝子は5101個、down regulationしたものは4750個認められた。これまでの我々の実験から、Thは老化と共に抗老人性難聴機能が低下することが分かっている。したがってSAMにおいて、月齢とともにこの機能に関連するThの遺伝子発現は低下するものと考えられる。そこで、AKRをnormalizeし遺伝子発現量を見たとき、1)young SAMでは1もしくは1以下、2)old SAMでの発現量がyoung SAMより十分減少、かつ3)Thに関連する遺伝子を検索した。この結果、TRAF3(TNF receptor-associated factor 3)遺伝子など、4つの遺伝子が同定された。
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