研究概要 |
頭頸部領域は機能上・美容上その温存が重要であり、この部位の癌を正常組織の損傷のない方法で治療可能であれば、高いQOLが期待できる。我々は2003年10月から、再発頭頸部癌17症例に硼素中性子捕捉療法(boron neutron capture therapy:BNCT)を行い、15例がPR以上という優れた抗腫瘍効果を証明した。我々はこの高い局所制御を生かすには、初期治療の一つとしてBNCTを行う必要があると考え、頭頸部進行癌に対して手術を前提とした術前照射としてのプロトコルを当大学倫理委員会の承認を得て進行頭頸部癌3例を術前照射として本治療を行った。症例の内訳は、74歳女性、耳下腺腺房細胞癌T4NOMO、58歳男性、涙嚢腺様嚢胞癌T4NOMO、50歳女性上顎腺様嚢胞癌T4NOMOであった。全例照射前に18F-BPA-PETを行い、腫瘍組織と正常組織のp-boronophenylalanine(BPA)集積比(T/N比)は2.5以上であった。治療後の平均観察期間は13.6ケ月(10〜20ケ月〉であり,治療効果は全例CRであった。現在3例全例生存中であり、照射に伴う早期および晩期合併症は認められなかった。この結果から同療法の強い局所治療効果が証明された。
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