研究概要 |
(1)Ussing chamber法による鼻茸上皮層の電気抵抗の測定:慢性副鼻腔炎患者から手術時に採取した鼻茸を割断してUssing chamberに取り付け,電気抵抗を測定した。前年度に引き続き,再現性の確認のための作業であるが,鼻茸では上顎嚢胞や鼻中隔弩曲症の患者から採取した下鼻甲介粘膜や鼻中隔粘膜の電気抵抗よりも有意に低い値が得られた。以上より鼻茸上皮ではタイト結合が障害されている可能性が示された。 (2)トレーサー透過試験:前年度に引き続き,塩化ランタンが鼻茸上皮を透過する現象について,再現性を確認する実験を行った。超薄切片を作成し電子顕微鏡下に観察すると,鼻茸上皮では側面の細胞間隙にランタンが侵入しているのが確認された。これに対し下鼻甲介粘膜や鼻中隔粘膜ではランタンの漏洩は認められなかった。これにより鼻茸上皮ではタイト結合が障害されていることが確認された。 (3)タイト結合蛋白の発現:免疫電子顕微鏡法によりタイト結合蛋白であるclaudinの発現を観察したところ,鼻茸上皮間では著しい不整が認められた。 (4)増殖因子受容体の検索:鼻茸組織,下鼻甲介粘膜,鼻中隔粘膜いずれにおいてもRT-PCR法によりerbB2と同様にerbB3のlnRNAが検出された。免疫組織学的にも上皮層にerbB3の陽性所見が認められた。局在はerbB2と類似した傾向を示し,下鼻甲介粘膜と鼻中隔粘膜では底側面に強い陽性所見が見られたが,鼻茸組織では上皮層全域において陽性のものが多かった。これに対してerbB4はRT-PCR法,免疫組織学的検索,Western blot法のいずれにおいても検出されなかった。 (5)上皮細胞の増殖能の観察:鼻茸組織をTNFα,IL-1βで刺激し,bromodeoxyuridineの取り込みにより上皮細胞の増殖について検討したところ,刺激前と比べて有意な取り込みの上昇は認められなかった。
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