研究課題/領域番号 |
18591904
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
吉田 晃敏 旭川医科大学, 医学部, 学長 (70125417)
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研究分担者 |
長岡 泰司 旭川医科大学, 医学部, 講師 (00333691)
高橋 淳士 旭川医科大学, 大学病院, 医員 (90422047)
佐藤 栄一 旭川医科大学, 医学部, 助教 (80422046)
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キーワード | 糖尿病網膜症 / 網膜循環障害 / 血管内皮機能障害 / レニンーアンジオテンシン系 / レスベラトロール / スタチン / C反応性蛋白 / 摘出血管 |
研究概要 |
平成19年度は、5編の英語論文を発表した。特に共同研究者である長岡は、米国テキサスA&M大学に留学し、そこで摘出血管を用いたin vitroでの網膜循環研究に従事した。主な業績として、網膜循環改善作用を有する薬物の探求として、高脂血症治療薬スタチンが網膜血管内皮細胞からの一酸化窒素(NO)の産生を介して網膜細動脈を拡張させることを示した。さらに、赤ワインに含まれるプリフェノールの一種であるレスベラトロールも、血管内皮および平滑筋に作用して網膜細動脈を拡張させることが明らかとなった。これらの知見を元にして、現在ネコを用いたin vivo実験系でこの結果を追試し、同様の結果が得られれば、糖尿病患者を対象とした臨床試験を行う予定である。これは現在本学倫理委員会に申請中のプロジェクトである。また、糖尿病や加齢黄斑変性、緑内障患者で血中濃度の上昇が報告されているC-反応性蛋白の網膜血管への作用を評価し、短時間の血管内投与によっても網膜血管内皮機能障害が引き起こされることが明らかとなった。それ以外にも、糖尿病網膜症で血中濃度が上昇するレニン前駆体プロレニンが未熟児網膜症でも上昇していること、さらに糖尿病網膜症と似た病理変化を示すインターフェロン網膜症患者で、網膜血管内皮機能障害が網膜症発症に関与していることを明らかにした。現在当科外来において、2型糖尿病患者を対象とした前向き臨床研究を行っており、網膜循環動態と網膜症の発症・進展との関連について検討している。現在投稿中である知見としては、網膜症発症早期から網膜血流は低下すること、罹病期間が増えるに従って増加に転じること、そして前向き研究の結果から、エントリー時に網膜血流が高値であった患者はその後効率に網膜症を発症するということが明らかとなってきた。 今後は本研究で得られた貴重な知見を元に研究を継続し、2型糖尿病網膜症の病態に網膜循環障害がどのように関与しているかを検討したい。また新しい治療法の開発を目指して臨床研究を行い、実際に網膜症の発症・進展予防につなげたいと考えている。
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