【Roml遺伝子異常網膜変性マウスに関する研究】 Roml遺伝子異常網膜変性マウス(Roml^<Rgsc1156>マウス)は、変異によりRoml蛋白にTrp182Argが生じている。コドン182はintradiscal loop内に位置し、この構造はRoml蛋白またはPeripherin/rds蛋白との四量体形成に重要である。光顕レベルで視細胞変性が明らかでない3週齢のマウス網膜を用いた免疫組織化学では、野生型よりもヘテロ、ヘテロよりもホモでRomlおよびPeripherin/rdsの免疫反応が低下していた。さらに同週齢の網膜蛋白を用いたWestern blotの半定量解析で、野生型のRoml蛋白を100%とした時、ヘテロでは51.6%、ホモでは2.8%であり、野生型のPeripherin/rds蛋白を100%とした時、ヘデロでは59.3%、ホモでは17.4%であった。このことは、Kedzierskiらの研究で、Roml蛋白とRds蛋白の総量が野生型の60%を下回ると外節の障害が生じ網膜変性を引き起こるという結論に合致している。また、Roml^<Rgsc1156>ヘテロマウスとPeripherin/rds遺伝子変異によるハプロ不全が原因であるrds/メマウスの網膜変性の程度がほぼ同じであることから、Roml^<Rgsc1156>マウスの網膜変性は、変異Roml蛋白によって野生型Roml蛋白、特に野生型Peripherin/rds蛋白が減少するために生じるのではないかと考えられる。免疫組織化学の結果から変異Roml蛋白は野生型Roml蛋白や野生型Peripherin/rds蛋白と四量体を形成したあとで速やかに変性されるのではないかと示唆されるが、変異Roml蛋白の四量体形成や安定性の解析は、in vitroの生化学的実験が必要である。
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