研究概要 |
方法:8週令のラットの左眼視神経を切断し、右眼をコントロールとした。24時間後網膜を回収した。一方、緑内障モデルとして、左眼に4nmoleのN-methyl-D-aspartate(NMDA)を硝子体内に注入した。右眼にはPBSを注入しコントロールとした。6時間後、24時間後に網膜を回収した。それぞれの網膜よりRNAを抽出しcDNAを合成した。定量PCR法によりBH3-only proteinなどの遺伝子発現レベルを定量した。内部コントロールとして、複数のhousekeeping geneを定量したのち、一般公開されているgeNormプログラムを用いてnormalization factorを算出し、定量に用いた。結果:視神経切断後24時間でBim,Hrkの発現が上昇した。一方、PUMA,NOXAなどの遺伝子の有意な発現上昇は見られなかった。他方、NMDA注入の場合、6時間後にはp53の発現が上昇した。24時間後には、Bim,Hrk,PUMAの発現は低下したが、NOXAのみ発現が上昇した。考察:視神経切断後にはHrk,Bimが上昇するのは我々や他研究者の報告と合致する。一方、NOXA,PUMAの上昇は見られないことから、視神経切断後の網膜神経節細胞死にはHrk,Bimが主にかかわっていることがわかった。他方、NMDAによる網膜神経節細胞死には、Hrk,Bimの関与は認められず、むしろNOXAが関与すると考えられた。NMDA注入6時間後でp53が上昇することから、p53による転写制御を介してNOXAが誘導されると考えられた。視神経切断、NMDA注入といった異なる細胞死誘導刺激が網膜において異なるBH3-only proteinを活性化することが明らかになった。現在in situ hybridizationにより網膜組織切片上で発現細胞を検討中である。
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