研究概要 |
ラット網膜に対し、圧負荷法により虚血再潅流障害を加えた後、ヒートショック蛋白、クリスタリン蛋白の発現状態を網膜のクライオ切片を使い免疫組織学的にスクリーニングした。ここで使用した抗体はクリスタリンAA, AB、BB2、BA3/1、GCである。この中で、陽性反応を得られたものは、クリスタリンAB、BB2である。クリスタリンBB2は再潅流後12時間をピークとして網膜神経節細胞層中心に高発現し、時間の経過とともにクリスタリンBB2は網膜神経節細胞の細胞核内に取り込まれることも明らかになった。一方、クリスタリンABはミュラー細胞内に高発現していた。TUNEL陽性細胞との2重染色を行うと、一部のTUNEL陽性細胞にクリスタリンBB2は発現していた。ウエスタンブロッティングにより蛋白発現量を検討してみると、クリスタリンBB2は再潅流後6時間ごろより発現を開始し、12時間後にピークを迎え、24時間以降はほとんど発現しないことが明らかになった。RT-PCRにより遺伝子の発現を見たところ、クリスタリンBB2の遺伝子発現を証明できた。以上より、網膜神経細胞のアポトーシスにはクリスタリンBB2が関与し、ミュラー細胞の障害抵抗性にはクリスタリンABが関与すると推察された。治療候補となる蛋白はクリスタリンAB, BB2と考えられた。よって次年度は、この2種遺伝子を使い培養系での高発現実験や、siRNAをつかった発現抑制実験を培養系と動物実験系で行う予定である。
|