本研究では、光ダイオードを使った人工網膜の問題点を解決するため、光電変換色素を使った人工網膜(岡山大学方式人工網膜)の開発を進め、その実用化をめざしている。光電変換色素は、小分子であり、また、弱い光でも反応して電位差を生じるので、光ダイオードの問題点を解決できる。さらに、光電変換色素を固定化するフィルムを選ぶことによって、生体適合性の問題も解決できる。岡山大学方式人工網膜の臨床研究に向けた準備として、その安全性と機能性評価を行った。 光電変換色素を固定化した膜に対する細胞接着性の評価 まだ視細胞外節ができていない時期のニワトリ胚眼球の網膜から、網膜神経細胞とグリア細胞を混合培養した。光電変換色素を固定化した膜の表面において、神経細胞とグリア細胞を混合付着培養させ、神経細胞とグリア細胞が付着して増殖する様子を、免疫染色法を使って染め分けて評価した。 光電変換色素を固定化した膜の安定性の評価 人工網膜試作品をラット眼球に埋め込むことによって行った。眼球の外側から強膜に窓を作り、脈絡膜を露出させ、そこに切開を入れて、網膜下、つまり、網膜色素上皮と神経網膜との間に光電変換色素を固定化したフィルムを挿入した。1か月後に眼球摘出し、パラフィン包埋し、パラフィン切片を作成した。HE染色と免疫染色を行い、人工網膜試作品のまわりの組織反応、炎症反応を見た。また、人工網膜試作品に接している神経細胞の状態、グリア細胞の状態を免疫染色で染め分けた。
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