研究概要 |
角膜ヘルペスとは単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染による角膜疾患であり、再発を繰り返す扱い難い眼感染症の一つである。その治療薬には現在アシクロビル眼軟膏が第一選択薬として使用されている。しかし軟膏であるため点入後しばらく見難く、不快感を訴えたり、点状表層角膜症をきたすことがある。そこで本研究は角膜ヘルペスに対し、水溶性でかつ安全な治療薬の開発をするものである。 RNA干渉とは二本鎖RNAにより配列特異的に遺伝子発現を抑制するものである。我々はこれを応用し、HSVのチミジンキナーゼの遺伝子発現を抑え、その結果としてHSVの増殖を抑え治療に繋げようと試みた。 1)1128の塩基からなるチミジンキナーゼを規定する遺伝子配列をよく検索し、siRNA配列設計を行った。RISC形成能およびヒト・マウス・ラット遺伝子に対するオフターゲット作用の面から、我々は5種類のsiRNAを特異的に選択し作成した。例えばsense strandとしてGCUACUGCGGGUUUAUAUAGA,そのantisense strandとしてUAUAUAAACCCGCAGUAGCGUを作成した。この他sense strand : GUACCCGAGC???UGACUUACとantisense strand : AAGUCAUCGG???GGGUACGU, sense strand : CAUAUCGGGG???CGUUAUUUとantisense strand : AUAACGUGUC???GAUAUGGG, sense strand : GUUCGCGCGA???UAUCGUCUとantisense strand : ACGAUAUCGU???GCGAACCC, sense strand : GUUCGCGCGA???UAUCGUCUとantisense strand : ACGAUAUCGU???GCGAACCCである。なお?の部はパテントの関係で公表を差し控えさしていただく。 2)VERO細胞とHSVのPH株(1型)を用いて、in vitroレベルでの上記5種類のsiRNAのウイルス増殖阻止曲線を描いている所である。5ug以下で抗HSV作用を発揮することを期待している。またその作用を示すものを次の動物実験に持って行く計画で進んでいる。 3)本番の動物実験が出来るように、予備実験を行い、我々の動物実験系統が正常に働くことを確認した。すなわち5匹の兎の両眼角膜にガラス毛細管を用いてHSVのPH株を接種した。HSV接種48時間後、全ての角膜に樹枝状潰瘍が形成されていた。その後右眼はアシクロビル眼軟膏を1日5回点入し、左眼は対象として基剤で治療した。治療4日後、アシクロビル眼軟膏を用いた方は樹枝状潰瘍は消失していたが、基剤を用いた方は大きな地図状角膜潰瘍となっていた。この結果我々の動物実験系統が正常に働くことが確認出来、上記in vitroの結果が出次第、このin vivoの実験に取り組む段階となっている。
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