研究課題
眼虚血状態での硝子体手術を施行し、D-アロースやMK-801を含むBSS灌流液を使用することによる網膜機能、組織に対する効果について検討した。術後7日目の網膜電図のb波の振幅は、術前を100%とすると無添加のBSS灌流液使用群(C群)C群では64%であったのに対してMK-801添加灌流液使用群(M群)では82%、Dアロース添加灌流液使用群(D群)では94%となり、C群に比べD群においてのみ有意に減弱が抑制された(対応のないt検定、P<0.05)。また組織学的検討では神経節細胞数と内顆粒層の厚みは、僚眼を100%とした場合C群では各々41%、61%であったのに対してM群では各々81%、100%、D群では各々66%、94%でM群、D群ともに障害の抑制が認められた(対応のないt検定、P<0.05)。以上の結果から、硝子体手術時の高眼圧による虚血状態によって網膜は機能的、組織学的にも障害を受けるが、灌流液中にMK801、D-アロースを追加することにより障害の抑制がみられた。MK801では構造的な保護効果のみであったが、D-アロースでは機能的な保護効果もみられた。これはDーアロースのグルタミン酸の放出の抑制作用によるものと思われる。すなわち、眼虚血状態で行う硝子体手術では、灌流液中に追加したD-アロースが網膜機能、組織の障害に対して神経保護的に作用する可能性が示唆された。この成果を受けて、平成20年度では神経保護作用のある灌流液の臨床開発に向けて、更に実験を進めていく予定である。
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Retina 28
ページ: 427-432
Jp.J Ophthalmol 52
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