研究概要 |
加齢黄斑変性の確実な危険因子である「加齢」により眼内にまず起こる変化は、網膜色素上皮(RPE:retinalpigment epithelium)細胞内へのリポフスチンの蓄積である。リポフスチン内に多く存在すると考えられる最終糖化産物(AGE:advanced glycation end products)からなる微粒子を作製し家兔の網膜下に注入したところ、加齢眼におけるリポフスチン蓄積と類似した状態を再現することができた。このモデルにおいて、加齢性沈着物であるドルーゼンや時に網膜下およびRPE下の脈絡膜新生血管の形成を認めた。リポフスチンは自発蛍光を発する顆粒であるが、最近、加齢黄斑変性発症に先行して眼底に異常自発蛍光が出現することが報告されている。そこで、我々が開発したリポフスチン蓄積模倣による家兔眼加齢黄斑変性モデルにおける眼底自発蛍光をHeidelberg Retina Angiography(HRA)-2にて測定を行った。人間の加齢眼で認める異常自発蛍光は8〜9種類にパターン分類されているが、linear pattern,patchy patter, shoe-lace patternなど人間で認めるパターンと近似した異常自発蛍光をこの家兔モデルでも観察できた。また、地図状萎縮周囲の異常自発蛍光の存在も人間の場合と似ていた。以上から、この家兔加齢黄斑変性モデルはヒトの加齢黄斑変性に近い病態であることが示唆され、加齢黄斑変性の発症機序におけるリポフスチンの役割や異常な眼底自発蛍光の発生機序を理解する上で有用であると考えられた。
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