研究概要 |
加齢黄斑変性は通常60年以上の年月をかけて眼内で蓄積した加齢現象により発症する疾患である。したがって、眼内で生後から出現する加齢現象を理解することは病態解明や疾患予防につながるものである。眼内にまず起こる変化は、網膜色素上皮(RPE: retinal pigment epithelium)細胞内へのリポフスチンと呼ばれる難溶性顆粒の蓄積である。リポフスチンは自発蛍光を発するが、近年の画像診断技術の進歩に伴い、微弱な眼底自発蛍光の検出が可能となったため、蓄積したリポフスチンに由来する自発蛍光を均一な背景蛍光として観察できる。高齢になるほど、特殊なパターンを示す異常眼底自発蛍光を認める場合があり、これは加齢黄斑変性の発症や病変拡大に先行して観察されることから発症を予見できる重要所見である。特徴的なパターンはpatchy, linear, lace-like, reticularなどに分類されているが、これらのパターンの違いに関する病理組織学的検討は十分に行われていない。我々は、これまでの研究で、リポフスチン模擬顆粒として最終糖化産物からなる微粒子を作製し、家兎の網膜下に移植することによりRPE細胞内へのリポフスチン蓄積を模倣したところ、硬性ドルーゼンや脈絡膜新生血管を認め、加齢黄斑変性モデルとしての有用性を報告してきた。また、このモデルにおいてもヒトど同様のパターンを示す異常眼底自発蛍光を認め、lace-likeを示す部位は、ヒトで観察されるのと同様に、地図状萎縮へと進展した。リポフスチン模擬顆粒は網膜下に排泄され、肺や脾臓にも存在が確認されたことから、リポフスチンは光毒性に関して注目されているが、RPE内に貯留しているまたは基底部に放出されたリポフスチンの物理的傷害の病態への関与が示唆された。本モデルは加齢黄斑変性の病態を再現しており病態解明に有用であると考えられた。
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