研究概要 |
今回の科学研究費申請研究により我々は、網膜特異抗原である光受容体間レチノイド結合タンパク(interphotoreceptor retinoid-binding protein;IRBP)のペプチドをマウスに免疫することにより発症させた実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(experimental autoimmune uveoretinit1s;EAU)を発症しているマウスの末梢血リンパ球、および網膜において特異的に発現増強している遺伝子を同定し、ぶどう膜炎を有するベーチェット病患者の末梢血T細胞においても網膜特異抗原であるS抗原およびIRBP刺激によりEAUで発現増強していた遺伝子がコードするタンパク産生が増強しているか検討した。 EAU発症マウスのT細胞では、免疫後1週目、2週目ともに5倍以上の発現増強がみられた遺伝子にはIL-17関連遺伝子があり、Th1細胞以外にTh17細胞もEAUの発症に強く関与していることが示された。そこで、ぶどう膜炎を有するベーチェット病患者および健常者の末梢血T細胞をIRPBおよびS抗原で刺激し、IFN-g,IL-17,IL-6,TNFa、IL-10の産生を測定したところ、その反応性T細胞の陽性率に関しては両群問で有意差はみられなかった。しかし、最適刺激濃度でのサイトカイン産生量はベーチェット病で促進されており、IRBP刺激ではIFN-g,IL-17,IL-6,S抗原刺激ではIFN-g,TNFaの産生増強がみられた。 今後はさらに症例数を増やし、またぶどう膜炎の発症がみられないベーチェット病患者、サルコイドーシス、原田病などの他のぶどう膜炎についても同様の検討を行い、今回得られた結果の再現性、およびこの結果がぶどう膜炎を有するベーチェット病患者に特異的なものであるのかに焦点を絞り、研究を進めていく予定である。
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