1.オーファン受容体RORαが網膜錐体細胞の分化に果たす役割についてさらに検討を加えた。RORαが直接Opnlsw(S-opsin)、 Opnlmw(M-opsin)、 Arr3(cone arrestin)の制御領域に結合し発現調節を行なっているかどうかをクロマチン免疫沈降法(ChIP)を用いて検討した。野生型マウス網膜では錐体細胞の数が少ないためにシグナルを検出できなかったが、すべての杆体細胞が錐体細胞に変化するNr1ノックアウトマウスの網膜を用いると十分な数の錐体細胞が得られ、RORαがOpnlsw、 Arr3のプロモーター領域およびOpnlmwのLocus control region(LCR)に結合していることが証明された。また網膜におけるRORαの標的遺伝子を探索するため、RORα欠損マウス(Staggerer)網膜の遺伝子発現をマイクロアレイを用いて網羅的に解析した。その結果、発現が野生型の1/2以下に減少した遺伝子が417、2倍以上に増加した遺伝子が329見つかった。今後定量的RT-PCRによる確認をおこない、ChIPによる検討も加え、RORαが直接的に制御する標的遺伝子を決定していく予定である。 2.光環境が網膜の神経発生に与える影響を調べるために、新生仔ラットを3週間連続照明下で飼育し、網膜における脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現を解析した。その結果、視神経細胞とアマクリン細胞のBDNF発現が著しく増加していることが分かった。BDNF陽性アマクリン細胞のサブタイプを検討した結果、約75%がコリン作動性であり、ドーパミン作動性アマクリン細胞の約半分もBDNFを発現したが、AIIアマクリン細胞はBDNF陰性であった。以上の結果より、コリン作動性アマクリン細胞がBDNFを介して網膜の神経発生を制御している可能性が示唆された。
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