網膜錐体細胞が特異的に発現する低波長光感受性オプシン(S-opsin)の発現がオーファン受容体RORαの変異により顕著に低下し、またRORαがS-opsinのプロモーターにin vivoにおいて結合していることを既に証明したが、今回さらにRORαによるS-opsin発現制御機構を詳細に検討するためにプロモーターアッセイをおこなった。S-opsinプロモーター(転写開始点から507bp長)にルシフェラーゼレポーターを結合したコンストラクトを作成し、RORαとともにHEK細胞に導入した。その結果RORα発現量に依存的にレポーターの活性化が認められた(約2-3倍)。さらに視細胞の分化に必要な転写因子Crxも同時に導入した結果、相乗的な活性化作用が見られた(約40倍)。S-opsinプロモーターには3箇所のRORα結合モチーフが存在するが、そのうち2箇所に変異を加えた結果、RORαとCrxによる活性化が顕著に減少し、またすべてのRORα結合モチーフを取り除きCrx結合部位のみを残したプロモーターでは活性化はさらに減弱した。以上の所見からRORαがS-opslnプロモーターに存在するモチーフに直接結合し転写を活性化すること、この作用に対しCrxが相乗的に作用することをin vitroにおいて証明した。今回得られた結果は、RORαがS-opsin、M-opsin、cone arrestinの遺伝子発現を制御するというこれまでの成果をさらに補強するものであり、網膜の細胞分化を制御する全く新しい転写因子を発見したことになる。この成果はJ. Neurochemistry(2009)に発表した。
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