研究課題
視細胞外マトリックスの新たな分子として、SPACRCANの同定に成功した(Inoue et a1., J Biol Chem.2006)。この分子は、SPACRとホモロジーの高いアミノ酸配列を持つが、最も異なる点は、SPACRが糖蛋白であるのに対してSPACRCANがコンドロイチン硫酸プロテオグリカンであること、そして、SPACRCANが視細胞外マトリックス空間に生前にのみ一過性に発現するのに対して、SPACRは生後より発現しはじめ、加齢とともに増加していくことである。これらは、神経網膜と網膜色素上皮の接着機序を網膜の分化と加齢という視点で考察するのに、非常に興味深い分子である。さらに、硝子体中のヒアルロン酸の起源が毛様体にて我々が初めて存在を示したFiVerHy(Fibrillin-Versican-Hyaluronan)という複合体からの分解産物である可能性を示唆した(Ohno-Jinno et a1.,Invest Ophthalmol Vis Sci. in press)。眼内で起こる様々な生理的・病理的現象に、FiVerHyが関係している可能性があり、今後の研究が期待される。最後に、FiVerHyの中心的分子であるversicanが、太陽光線により分解し、ヒアルロン酸結合能を失うことを皮膚の系を使って示した(Hasegawa et a1., J Invest Dermatol.2007)。この現象は、例えば、加齢により起こるとされる後部硝子体剥離が、実は太陽光線により硝子体のヒアルロン酸分解を促進させ、結果的に後部硝子体剥離を助長するとも解釈され、非常に興味深い。研究の目的である「網膜剥離に対する新しい治療方法」の確立に至っておらず、この夢の実現のためには、さらに眼内組織における分子の基礎的な背景をしっかりと把握する必要がある。
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J Invest Dermatol. 127
ページ: 1657-63
Invest Ophthalmol Vis Sci. (in press)