研究課題
基盤研究(C)
本研究においては、β-カテニン異常が腎細胞の腫瘍化につながる変化をもたらすか否かを検証する目的で、まず胎児性腎から樹立されたHEK293細胞に正常(WT)ならびに変異β-カテニン遺伝子を導入しstableな細胞株クローンを樹立選択した。この際DOXの付加によってβ-カテニンの発現制御が可能なシステムをデザインし、WT、codon45に点突然変位を有するもの(P45)、またexon3を欠失した変異(Δex3)の3種類のクローンを得た。これらを用いてさらに転写活性と細胞増殖に対する影響を検討したところ、WTとP45については、転写活性の亢進が観察され、当該クローンにおいては外来導入β-カテニンによりT-cell factorと共役して種々の下流に遺伝子の転写を活性化していることが考えられた。しかし、一方で細胞増殖をWST-1法にて培養8日目まで検討した結果では明らかな変化、特に細胞増殖を亢進させている所見は得られなかった。これらのことから、腎細胞の細胞増殖や腫瘍化における、変異β-カテニンの持つ意義を証明するには至らなかった。他方、遺伝子サイレンシングという観点から神経芽腫細胞株NB-1においてMYCN遺伝子作用の抑制を試みた実験では、腫瘍増殖抑制とアポトーシスならびに細胞分化の誘導が得られた。このことからMYCN増幅と発現亢進を示す神経芽腫においては、こうした異常が腫瘍化に少なからぬ意義を有すること、また、こうしたサイレンシングは治療の面からも将来的に有望な戦略であることが考えられた。
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