平成19年度においては、肝細胞シートを生体内に貼布移植するというこれまでにない新しい肝ティッシュエンジニアリング手技の確立ならびに、シート組織の高機能化にむけた研究開発を行い、以下の成果を得た。 新しい肝ティッシュエンジニアリング手技の確立においては、第一に組織作製局所での血管網の確立、次いで肝細胞シート貼布移植という2段階手技を行った。平成18年度の本申請研究で作製技術を確立した血管網誘導デバイスをあらかじめマウス皮下に一定期間挿入して血管網を作製した。次いで、温度応答性培養皿にて2-3日間培養した肝細胞を、培養温度を15-20分間20度に変化させることによりシート状組織として回収した。この回収した肝細胞シートを、デバイスにより作製した血管網誘導皮下空間に貼布移植を行った。この手技により、200日を超えて安定して機能する肝組織の作製に至った。さらに、肝細胞シートを2枚、4枚と積層して移植する手技を開発した。皮下にシート組織を積層することにより、作製組織の3次元化および高機能化に成功した。 次いで、移植に用いるシート組織自体の高機能化にむけた開発を行った。これまでの実験においては、肝細胞のみであった細胞構成を、肝臓の非実質細胞の一つである類洞内皮細胞を肝細胞に加えて培養下でシート化させた。肝細胞と類洞内皮細胞を混合培養しすることにより、アルブミン産生をより高いレベルで維持することが可能となった。この類洞内皮細胞混合の肝細胞培養を温度応答性培養皿上にて行うにあたり、細胞をコンフルエント状態にり、シート状組織として回収するために、培養液組成ならびに増殖因子の添加の観点からの至適化を行い、混合培養シートを安定して回収する手技を確立した。
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