研究概要 |
サリドマイドは1990年代から癌の治療薬として注目されはじめた。サリドマイドの抗腫瘍作用は、その血管新生抑制作用に基づくと言われているが、作用機序は依然として不明である。サリドマイドを抗腫瘍治療薬として承認するためには、臨床試験の実施と共に、サリドマイドがなぜ腫瘍に対し効果があるのか、その基礎的な作用機序を明らかにすることが必須である。そこで、平成18年度、申請者は『サリドマイドの抗腫瘍作用のメカニズムを明らかにする』研究の一環として、In vitro血管新生モデルを用いて培養下で人工血管をつくり、サリドマイドが新生血管に対しどのように作用するのかを形態学的、免疫組織化学的さらに分子生物学的に調べた。 実験の結果、in vitro血管新生モデルを用いた実験群では、一旦、コントロール群と同様の毛細血管が新生された後、次いで、アポトーシスによる血管退縮が起こっていくことがわかった。サリドマイドは血管新生そのものを抑制するのではなく、新生血管のアポトーシスを誘導させることにより、腫瘍に対する栄養供給を遮断し、有効な治療結果が得られているのではないかと思われる。 これらの研究成果は第38回日本臨床分子形態学会(DNAマイクロアレイを用いた三次元血管新生培養モデルにおける遺伝子解析,2006年9月30日,山口)ならびに第112回日本解剖学会総会・全国学術集会(三次元血管新生培養モデルにおける血管新生阻害実験,2007年3月29日,大阪)において発表した。
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