本研究の目的は今まで使用してきた人工皮膚材料にさらに組織工学的手法を用いて免疫細胞を加えヒト皮膚モデルとし、これに対して創傷を作製して実際の皮膚における創傷治癒過程をシミュレーションして解明するとともに、その過程において培養液中に各種創傷治癒因子を付加して創傷治癒反応の変化を調べることである。 平成18年度は単球を付加したヒト皮膚モデルにレーザーを照射して創傷を作成した後の創傷治癒過程を調べた。さらに標本内に単球を組み込むための基礎実験とその創傷治癒の変化についての病理組織的・免疫組織化学的検索は現在も継続中である。 さらに今年度はこれらの成果を臨床応用するために人工皮膚モデルの改良を目的としてアミノ酸1%と水99%から構成される繊維構造を持ち、動物由来の材料や病原体が含まれず生体適合性に優れているペプチドハイドロゲルを担体として用いた培養皮膚を新たに開発した。 その方法としては新生児由来ヒト真皮線維芽細胞をペプチドハイドロゲルと混合して真皮層を作製した後、真皮層上に新生児由来ヒト表皮角化細胞を用いて表皮層を作製した標本から病理切片を作製しHE染色と免疫組織化学染色を行った。また真皮内の線維芽細胞数を定量した。 その結果は標本内においてマトリックス構造内に生着したヒト線維芽細胞とその細胞増殖を確認でき、また細胞周囲にヒト1型コラーゲンの存在を確認できたので生着した線維芽細胞はその機能を発現していることが示唆された。また培養皮膚の表皮層において角化細胞の重層化を認めたが未分化で分裂能の高い基底細胞演その主体であった。 今後は今回開発した培養皮膚モデルに対して創傷を作製して創傷治癒過程を解明するとともに、この培養皮膚は未知の感染症に対する危険性がないので臨床応用に向けての可能性を検討する予定である。
|