深部静脈血栓後遺症は、血栓器質化による静脈閉塞および静脈破壊による逆流が原因で永続する下肢の腫脹および静脈潰瘍等の症状きたすものであり、深部静脈血栓症を発症した約80%脳の症例が深部静脈血栓後遺症に移行すると報告されている。特に最近では静脈閉塞よりも静脈逆流がより大きく関与しているといわれており、逆流防止が深部静脈血栓後遺症発症防止の鍵となる。静脈弁不全の程度が経度の場合は、静脈逆流を防止するため、弁形成術を選択することも可能である。しかし深部静脈血栓症後の弁不全は高度であり、一部の症例を除いて修復不可能である。 そのため深部静脈血栓後遺症を発症した症例の大部分は特別の治療法もなく、対症療法を受けているのみである。そこで本研究では、深部静脈血栓後遺症に対する新しい治療法として深部静脈留置型生体静脈弁の開発を行うことが研究の目的であった。5頭の成犬で実際の実験を行った。鼠径部より7Fテフロン製のシースを大腿静脈に挿入し、ヘパリンを100IU/kgの量を経静脈内投与し、delivery systemを用い、生体静脈弁を下大静脈内にdeployした。同部位でstentを開大し、下大静脈内に固着した。Deploy直後の弁機能を評価するため、デュプレックス・スキャン(SnoSite)で上行性の静脈血流を確認したが、5頭のうち3頭で血栓性閉塞をきたし、その目的を達しなかった。そのため、今後は、生体静脈弁の臨床応用よりも静脈開大を目的とした抗血栓性のステントを考案することを目的とし、血管内をカバーする距離が長い、スパイラルZステントを用いた。フレームの部分に縫着する生体静脈弁の本体には、小腸粘膜シート(Cook Biotech)を選択し、7-0ポリプロピレン糸でフレームに固定し、最終的な生体静脈弁を作成した。最終的な生体静脈弁は、ロングステントの下方1/3の部分に生体静脈弁を縫着したものであり、長い距離の脈閉塞病変に対する開大と逆流病変に対する逆流防止の二つの効果を考慮したものである。
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