平成20年度は集中治療室で鎮静薬を投与されている敗血症を伴わない患者と敗血症患者から採取した白血球を採取して、それらの細胞でのI-κBとNF-κBのDNAの発現量、apoptosisの発現を検討した。 白血球の細胞濃度を2.5〜5x105個/mlになるように調節した。調整した細胞混濁液をマイクロプレートに乗せプロポフォールやミダゾラムと供に一晩培養。Apoptosis誘導剤(カナマイシン)50μLを加えさらにCO2インキュベーターで16〜20時間培養。10〜100μLの0.4%トリパンブルーを加え、顕微鏡の倍率を100倍に合わせて、1mm2の区画全体の視野から、トリパンブルーに染まらない生細胞と青く染まる細胞の数をカウントした。これによりApoptosis発現とI-κBとNF-κBのDNAの発現量の関係を検討した。 敗血症患者においてはapoptosis発現が鎮静薬投与で著明に発現が観察されかつ、I-κBとNF-κBのDNAの発現量も著明に増加していた。一方、敗血症を伴わない患者ではapoptosis発現はほとんど観察されなかった。またI-κBとNF-κBのDNAの発現量も増加していなかった。 これらの観察結果の意義は、敗血症を伴う患者においてのみ鎮静薬投与で白血球のapoptosis発現が誘導され、その誘導にはI-κBとNF-κBが関与していることが判り、集中治療領域での鎮静薬の長期間使用で免疫抑制が惹起される可能性を証明した。
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