研究概要 |
【実験目的】グラム陰性菌による敗血症の合併症としてacute respiratory distress syndrome(ARDS)がある。ARDSは重症な肺の炎症疾患であり、サイトカインなどの炎症性メディエーターが関与している。一方、核内酵素であるpoly(ADP-ribose)synthetaseは、NFkB依存性の炎症性メディエーターの転写活性を増幅させる。したがってpoly(ADP-ribose)synthetaseを阻害することにより、敗血症性ARDSの病態を改善することが期待できる。本研究では、エンドトキシン(LPS)およびザイモサンの気管内投与により敗血症性ARDSモデルを作成し、poly(ADP-ribose)synthetase活性阻害薬を投与することにより、ARDSの病態を改善できるか否かを検討した。 【方法】ラットの腹腔内にペントバルビタール(50mg/kg)を注入し麻酔をかけた。気管切開後、人工呼吸を施行し、右内頸動脈と頸静脈にカニューレを挿入した。1)Control群:生食を静注。2)LPS群:ARDSはLPS(3 mg/kg)を生食0.3mlに溶解し気管内に投与、1hr後にzymosan(10mg/kg)を生食0.3mlに溶解し気管内に投与することにより作成。3)LPS+3-aminobenzamide群:LPS(3 mg/kg)およびzymosan(10mg/kg)を気管内投与後、poly(ADP-ribose)synthetase活性阻害薬3-aminobenzamide(10mg/kg:0.2ml/kg生食に溶解)を腹腔内投与。血液ガス、血糖値、乳酸値測定は、0,3hrで行い、3hr後に屠殺し、肺のwet/dry比を測定した。 【結果】Control群では、変化はなかった。LPS群では、代謝性アシドーシスとなり、酸素化は悪化し、肺水腫を起こした。LPS+3-aminobenzamide群では、代謝性アシドーシス、酸素化悪化、肺水腫の軽減傾向が観察された。
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