我々はインスリン抵抗性を司っていると考えられている、核内転写因子Peroxisome proliferator-activated receptor (PPAR)-γLignadであるピオグリタゾンが、ワイルドタイプのマウスのみならず、アポリポプロテインE(apoE)ノックアウトマウスにおいても敗血症の予後を改善させることを示した。本実験において、敗血症発症後の血圧が低下した後に投与しても予後改善効果があることを示したことは大きな意義があると考えられる。これらの予後改善効果は、ピオグリタゾンが血管内皮細胞に対する、炎症性細胞の接着を抑制することを介して、肺、肝臓の炎症性細胞の浸潤を抑制することによることが明らかとなった。その結果、両組織、さらには全身の炎症反応の抑制されることが、血中サイトカイン濃度の測定や肺、肝臓におけるミエロペルオキシダーゼ活性測定などによって示された。 また、apoEは敗血症の原因物質となる細菌の菌体物質であるリポポリサッカライド(LPS)の排泄に大きな役割を果たしており、apoEの多型性が敗血症の予後を左右することが判明している。この、重篤な敗血症のモデルと考えられる、apoEノックアウトマウスにおいても通常のマウスと同様に、血圧低下後に投与を行っても予後改善効果を示したことは、集中治療室入室患者において高い致命率をもち、心血管病の次の大きな死因となっている重症敗血症の治療に一つの可能性を示したものと考えられる。
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