研究概要 |
敗血症性ショックはいまだに確固たる治療がなく、救命率も高くない現状である。また近年、敗血症の際に血液浄化法(持続的血液濾過透析やエンドトキシン吸着療法など)の使用が注目され、血液浄化により敗血症が改善するという報告も散見されるようになった。しかしながら敗血症性ショックに対する血液浄化法の有用性は未だに乏しく、生命予後を改善するまでに至っていない。研究代表者は、炎症性サイトカイン等のmediatorを吸着、除去できるカラムを開発した。このカラムは多孔質セルロース系吸着体を充填した特異的にサイトカィンを吸着できるカラムである。今年度(平成18年度)は、ラットを用いたエンドトキシンショックモデルに対して新しいカラムを用いた血液浄化法を行い、生命予後の改善を検討した。 <実験内容とその結果>敗血症性シヨックモデルとして体重350-400gの雄ラットを用いて、エンドトキシンを静注してエンドトキシンショックモデルを作成した。エンドトキシン投与2時間の時点で、サイトカイン吸着カラムを用いた血液浄化法を2時間施行した。エンドトキシン投与後の生存率と循環動態、呼吸状態をはじめ,血中サイトカイン濃度を治療群と比較検討した。その結果、エンドトキシン投与8時間の時点で、生存率は対照群が14%、治療群が65%であり、治療群で有意に効果を認めた。また、サイトカインの変動においては、TNFαは群間に有意差を認めないが、IL-1β、IL-6とも治療群が有意にその産生を抑制することが判明した。 <結論>今年度の検討により、新しく開発したカラムは動物実験でその効果を発揮することが判明した。来年度は、臨床応用を考慮すべく、カラムの容量を決定し、その他あ敗血症性モデルに対して検討を重ねたい。
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