消化管内細菌巣の変化が、全身あるいは遠隔臓器における免疫応答に及ぼす影響について評価した。抗菌薬投与による消化管内常在菌巣の根絶下での感染病態モデルを作成した。無菌的に飼育されたマウスを用いて、臨床病態に即した抗菌薬投与状態としてストレプトマイシン、セフォタキシム、及びメトロニダゾールを投与し、投与による消化管内常在菌巣の評価を行った。糞便検体を用いた嫌気・好気的細菌培養法による定量、各種の細菌種に特異的な細菌16S-ribosomal DNAに対する特異的プライマーを用いた定量的PCR法を用い評価したところ、消化管の常在細菌巣はほぼ死滅していた。同時に消化管内のpHはコントロール群に比し上昇し、総有機酸濃度が有意に低下していた。自然免疫応答の変化をみるために腹腔内マクロファージのTLR4の発現率をFCMにて計測した。マクロファージはF4/80にて標識した。消化管常在菌巣を根絶するとTLR4の発現率が低下していた。さらに、LPS(12.5mg/kg)腹腔内投与による敗血症モデルを作成し、LPS投与後の自然免疫応答を評価した。血清中TNFα、IL-6などの炎症性サイトカインの反応は消化管内常在菌巣を根絶すると有意に低下した。特に腹腔内マクロファージのTLR4発現量はコントロール群に比し低下したままであった。以上より、消化管内細菌巣の根絶が、全身あるいは遠隔臓器における免疫応答に対し抑制的に影響していることが示唆された。なお、本研究の要旨は2007年度日本麻酔科学会学術集会にて報告する。
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