本年度は末梢血単球中のヘムオキシゲナーゼI(HO-1)活性測定法の検討から実験を進めた。測定にはwestern blottingが通常選択されるがその測定の煩雑さを考え、私はFACSによる方法を選択した。Vayssier-Taussat Mらの方法に従い、細胞膜透過処置後抗HO-1抗体にて染色しFACSにて測定した。すなわちヘパリン加採血にて採取した全血より、遠心濃度勾配法にて単核球分画を分離する。分離した単核球分画は抗CD3抗体および抗CD14抗体にて表面抗原を染色したのち1%ホルマリンにて固定する。ついで0.2%サポニン加PBSにて細胞膜透過処置を行う。PBSにて2回洗浄後、FITC標識抗HO-1抗体を添加し20分間incubateする。1回洗浄後にフローサイトメーターにて単球領域およびリンパ球領域のFITC蛍光度を測定する。リンパ球はHO-1を含まないためリンパ球から得られた蛍光度を対照として単球から得られた蛍光度をHO-1タンパク量とした。現在20例ほどのICU入院患者で測定を終えている。また同一患者全血中に含有する一酸化炭素濃度はガスクロマトグラフィーで測定を行っている段階である。さらに酸化ストレスの指標として血液中ヒドロペルオキシドによるジエチルパラフェニレンジアミンの呈色反応を、また血液中の抗酸化能は次亜塩素酸の酸化に対する血液サンプルの消去能を分光光度計で測定予定にしている。現在のところ重症度、敗血症の有無、と血液中一酸化炭素濃度、HO-1活性との間に有意な相関は認められていない。今後症例を重ねてより詳細な検討を行う予定にしている。
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