non-coding RNAは転写される全ヒト・ゲノム情報の約98%を占めるものの、蛋白質に翻訳されないため、non-coding RNAが座位するゲノム非コード領域はゲノム上で役に立たないジャンク領域とされてきた。しかし、小分子non-coding RNAであるmicro RNA(miRNA)によるsmall interfering RNA(siRNA)様のRNA干渉(RNAi ; RNA interference)や翻訳阻害(遺伝子サイレンシング)が報告され、miRNAを含めたゲノム非コード領域の遺伝学的重要性が再認識されつつある。本研究課題においては、特にゲノム情報発現系の新規調節・制御分子として注目されるmiRNAに着目して、既にアレイCGH法による網羅的ゲノム・コピー数異常に関する解析を完了した18株の口腔扁平上皮癌(OSCC)細胞株および正常口腔粘膜上皮由来不死化細胞株RT7における157種のmiRNAの発現変化をTaqMan(R) Micro RNA Assays Human Panel Early Access Kitを用いて定量的に解析し、OSCC細胞株で高頻度(66.7%-100%)に発現低下している5種類のmiRNAを見出した。来年度は、OSCCの癌化や術後再発の予測に有用なマーカー分子や予後因子、あるいは分子標的治療の標的分子となり得るOSCC関連miRNAの単離・同定とその分子機序の解明をも視野に入れ、今年度の本研究で見出された5種類のmiRNAの発現消失機序や癌抑制効果を含めた生物活性とその分子機序、さらにはOSCC症例における発現変化等について、詳細な解析を試みる予定である。
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