研究概要 |
低リン血症における骨形成/歯牙形成異常の分子機構を明らかにする目的で,研究計画の実施予定の2項目について検討し,いくつかの主として以下の所見を得た。 1)Pit1トランスジェニック(Pit1-TG)ラットの歯牙・歯周組織の組織学的特徴の検索。 Pit1はユビキタスに発現するタイプIIIのNaPiトランスポーターであるが,骨組織の石灰化や血管平滑筋など異所性石灰化のトリガーの1つとして考えられている。Pit1-TGラットは生後4週より白内障,低体重,生後8週より蛋白尿,低アルブミン血症,高脂血症を伴い,進行性のネフローゼ症候群を示し,寿命が短い。今回,成獣の歯牙,歯周組織について,TGラットと正常ラットの組織学検索を行ったところ,これらの形質異常の程度に一致して切歯に著明な異常所見を認めた。とりわけ,エナメル芽細胞の成熟期における機能障害が示唆された。 2)ラット骨芽細胞におけるリン酸-Pit1応答の上流/下流の因子の少なくとも1つを同定。 リン酸-Pit1応答と関連すると予想される線維芽細胞増殖因子(FGF)23組換えアデノウイルスをラット頭蓋由来細胞に感染させた。これによって得られた石化化障害を示す骨芽細胞と正常に石灰化する骨芽細胞を用い,GeneChipマイクロアレイを実施した。約32,000の遺伝子のうち,未同定の遺伝子を含む約50の遺伝子の発現量の変動を認めた。このうち,現在明らかにされているリン酸代謝関連遺伝子では唯一Phex(phosphate-regulating gene with homologies to endopeptidases on the X chromosome)が含まれていた。現在,siRNAによる骨芽細胞でのPhexノックダウンを実施し,Pit1を含むリン酸と石灰化の分子機構をより詳細に検討している。
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