研究概要 |
【目的】口腔細菌と全身疾患との関係が問題となっている。口腔細菌やその成分・毒素が血管内に入り,門脈を介して肝臓に流入後,胆汁中に排泄されて胆管上皮細胞に悪影響を及ぼす可能性が考えられる。本研究は,肝膿瘍や脳膿瘍に関わる口腔レンサ球菌であるStreptococcus intermediusの産生するIntermedilysin(ILY)が,培養ヒト胆管上皮細胞にどのような影響を与えるかについて検討することを自的とした。 【方法】培養細胞はヒト胆管癌細胞HuCCTlを,ヒト特異的細胞溶解毒素であるILYはS.intermedius UNS46株由来を用いた。細胞内Ca^<2+>濃度変化はFura2-AMを用いてカルシウムイメージング解析装置ARGUS-50で測定した。膜傷害の検出にはLDH Cytotoxicity Detection Kitを用いた。CD59のクラスター化には抗CD59抗体,核の形態および蛍光強度の変化にはHoechst 33342,DNA2重鎖切断の検出には抗Phospho-Histone H2AX(Ser139)抗体と抗Histone Hl.2抗体,核膜抗原の異所性表出の検出には抗Lamin B1抗体等を用いてそれぞれ蛍光染色法により検討した。 【結果と考察】ILY刺激によりCD59のクラスター化,細胞内Ca^<2+>濃度の上昇,Ca^<2+>オシレーション,細胞と核の縮小,DNAの2重鎖切断およびLamin B1等の核膜抗原の核外漏出と異所性表出がみられた。ILY刺激による核膜抗原の細胞表面における異所性表出は自己抗原の供給源となりえるため,胆管上皮細胞を標的とする自己免疫性肝疾患の誘導にILYが関与する可能性が考えられた。
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