本研究課題では、T細胞活性化、マクロファージ系細胞からの破骨細胞分化に対するlimitinの作用一機構に焦点を絞り、limitimがI型IFN様因子でありIFNα/β受容体を用いていることを出発点とし、細胞内情報伝達機構を解明する。また、16年度・17年度の基盤研究Cで得られた成果によれば、limitinが活性化T細胞においてはNFATc1発現を抑制せず、破骨前駆細胞内ではNEATc1発現を抑制することが明らかになっている。この機構の少なくとも一部に、PKR系が関与している可能性が示されている。したがって本研究課題では、limitinがIFNα/β受容体結合以降、細胞内情報伝達を通していかに破骨前駆細胞内でNFATc1発現を抑制するのかを、PKR系に特に重視して平成18年度は検討した。その結果、limitinの破骨細胞形成抑制効果には、PKRmRNA発現を介したc-Fosタンパク質合成阻害が重要であることを見出した。平成19年度は、特に活性化T細胞において活性化T細胞内での情報伝達機構の解析、活性化T細胞内PKRmRNA発現促進機構の解析、活性化T細胞内でのPKRを介した蛋白質翻訳抑制機構の解析、活性化T細胞内でのカルシウム-カルシネウリン系及びIL-2産生に対するlimitinの作用の解析を行った。その結果、limitinは、NFATc1mRNAの発現に影響を与えなかった。また、sRANKL及び、TNFαの産生にも影響を与えなかった。さらに、CD3抗体による増殖も抑制しなかった。以上の結果、limitinはT細胞活性化に影響を与えず破骨細胞の形成を押さえることが示唆された。
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